中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性も理解しているし国も中小企業への推進をしているのでDX化を進めてみたい、しかしDX化の進め方がわからない、ということもあるのでは。
DXを進める上では全社のデジタル化が必要ですが、業務フローの中に紙による業務がある場合廃止することから手をつけてください。
今、紙による業務で会社が回っているからと放置する中小企業と、デジタルに置き換えDX化を推進する中小企業で今後生産性や事業変革など各段に差がつき企業の存続にも影響する可能性があります。
IT業界で日々クラウド導入など企業からのご相談を頂いて来た経験を踏まえDX化の進め方を解説します。
また経済産業省からも中小企業向けDXへの手引きがまとめられています。
参照:経済産業省 中小企業のDXに役立つ「手引き」と「AI導入ガイドブック」
中小企業のDX化進め方① 業務フローの整理と実現すべきことの確認
DXを進める上で業務のIT化が必要ですが、まず現在の業務フローを書き出し、その中でアナログ作業の部分を確認します。
アナログ作業部分はデジタル化(クラウドサービスに置き換える)することになりますが、アナログ作業をクラウドサービスに置き換えた場合の業務フローを作成してください。
特に紙による業務が中小企業のデジタル化の妨げになっているため一番はじめに廃止すると考えてください。
また、デジタル化で新たに実現すべきこと(業務要件)の整理も同時に行います。
これまでの業務で実現していたことができなくなってはもちろん問題となりますが、デジタル化で実現したいことを整理します。
<アナログ業務をデジタル化の例>
- 紙への押印業務 → デジタル押印
- 社内承認作業 → デジタル承認
- 紙の保管書類 → 既存ドキュメントのデジタル保管と検索
- 紙の資料作成 → デジタルなドキュメント作成と共有
- 顧客情報管理 → デジタル上で管理
バックオフィス部門、営業部門などすべての部署でデジタル化したワークフロー作成を行います。
- 現在の業務フロー作成(アナログ作業の抽出)
- アナログ作業をクラウドに置き換えた場合の業務フロー作成
紙の業務の廃止は必要最低限の実現しなければならないことですが、対面でのコミュニケーションがなくても業務が回ることを念頭に業務フローを作成することが重要です。
出社せずリモートワークで業務が問題なく回るなどすべてオンライン上で完結できる業務フローを作成します。
デジタル化へ向け全社でワークフローを手間と時間をかけて作成できるかが、躍進する中小企業と停滞する中小企業との分かれ道。
経営者が強い意思を持ち全社的に実施できるかがキー。
中小企業のDX化進め方② ITサービスの検討と導入
次にDX化プロジェクトへの人員体制や予算の確保を行います。
社内で整理した業務要件(実現すべきこと)を踏まえ、将来を見据えたクラウドサービスを探し導入計画まで立てます。
該当業務に携わる中からプロジェクトメンバーを選定し、対応するクラウドサービスを複数探し費用を含め全社的に検討。
どのようなクラウドサービスが各部署の目標を達成できるのか、適しているのかについては業務を行う現場社員が一番理解しているため経営側だけで決定せず現場社員の意見を重視しつつ検討し予算化、導入します。
もし既存のクラウドサービスで自社が求める要件を満たせない場合は、システム開発会社に依頼し自社独自のシステム開発の依頼を行います。
また、なぜクラウドサービスなのかと思われるかも知れませんが、例えば昔はソフトをパソコンにダウンロードする「所有型」のITサービスが主でしたが、それは20世紀型ITサービスの話です。
現在はクラウド上にあるサービスを「利用する」というサブスクリプション型となり、パソコンと通信環境さえあれば働く場所はどこからでも可能となりました。
これにより働き方など採用活動や労働形態にも大きな変化が生まれ優秀な人材確保という観点でも影響が及んでいます。
これまでのアナログ作業をクラウドサービスに置き換えることで費用がかかることに躊躇するのではなく必要なものとして理解できるかが、躍進する中小企業と停滞する中小企業の分かれ道。
中小企業のDX化進め方③ 導入したクラウドサービスを使い倒しITリテラシーを高める
導入した後はITサービス(クラウドサービス)を使い倒すことで全社員のITリテラシーが高まります。
紙のドキュメントは必要な保存期間を経過したものはシュレッダーをかける(一部できないものを除き)つもりですべてデジタル上に保存したものを使うなどデジタルに慣れ、アナログ業務に戻ることがないようにします。
特にバックオフィス業務については、クラウドサービスを利用することで労働生産性が上がり余剰人員を他の業務へ振り分けることができる可能性が高まります。
全社員のITリテラシーが高まることで業務に対する発想にも変化が生まれることが期待され社員一人ひとりがDX人材としての土壌が醸成されます。
<クラウドサービスを使い倒すことで醸成されるもの>
- クラウドサービスへの慣れ
- デジタル上でのコミュニケーションスキル
- データの分析力
- データ活用による課題解決力 など
クラウドサービスを全社に浸透させ全社員が使いこなしITリテラシーを高められるかが躍進する中小企業と、停滞する中小企業の分かれ道。
中小企業のDX化進め方④ 新しい価値や変革へのヒント
DXへ向けた土台作りであるIT化領域について解説しましたが、実際にどのようにDX本来の新しい価値作りや変革を行うかについてヒントをお伝えします。
顧客情報管理をクラウド上で管理するサービスとして、顧客との関係性を管理するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)や営業支援を行うシステムSFA(セールス・フォース・オートメーション)などがあります。
SFAは営業の案件別・担当別の管理などにフォーカスしており、商談履歴・受注率・契約までの期間などを可視化が可能。
そのため営業の予実管理や分析をし、どこに営業リソースを投下すれば効率的に成果を上げることができるのかをデータで可視化することができます。
あくまでも可視化までがシステムの役割でそこから先の営業活動にどのように役立てるかを自社で判断することで営業活動の変革につなげることができます。
その他マーケティング領域ではMA(マーケティング・オートメーション)はじめ、クラウドサービスを導入することで日々集まるデータを可視化することで生産性が向上し削減できた時間を新しい商品・サービスの開発に充てるなど価値創造につなげることができます。
経理担当者にしてもクラウドサービス導入に伴い削減できた時間を活用し、財務領域に投下するなど一人当たりの生産性を高めることも可能です。
データを可視化しそこからどのように役立てることができるか考えることができる中小企業は躍進、可視化止まりでは停滞する中小企業となる可能性。
中小企業のDX化進め方⑤ ゴールを明確にし取り組む
ご説明したようにクラウドサービスを導入するとアナログ業務時代と比較し生産性を向上させることができます。
但し、クラウドサービスを導入すれば生産性が向上するということではなく、ゴールを明確にし取組むことが重要です。
近年データドリブンという言葉で表現されていますが、集まるデータを活用しどのようなことを実現したいのか、会社の目標に対し各部門がどのような数値目標を立て実現のために集まったデータを活用するのか戦略を立て日々業務に向きある必要があります。
蓄積されたデータを元に、既存のビジネスモデルをいかに変革し新たなビジネスを創出するのかが重要です。
ゴールを明確にし既存のビジネスモデル変革に取り組むことができるかどうか、躍進する中小企業かそうでないかの分岐点。
まとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの浸透により人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる、ということですが企業としてはデータやデジタル技術を活用して業務を変革し競合への優位性を確率することになります。
業務フローにアナログ作業が含まれている中小企業も多いと思われます。
DXに向けては業務をすべてデジタルで完結できる事が必要で、クラウドサービスの導入や自社業務に適したサービスがない場合はシステム開発を通じ全業務をデジタル化を行うなど対処が必要です。
費用はかかるものの世の中に求められる企業として存続のためにも経営者が中心となった推進力が必要です。
その上で全社を挙げ設定したゴールへ取組むことで自社の生産性だけでなく、世の中の変革につながる商品・サービスの提供実現につながります。
世界と比較しIT化の遅れている日本企業、中でもDX化に取組んでいる中小企業は多くはなく国も中小企業のDX推進を勧めています。
その取組みへこの記事が参考になれば幸いです。